お母さんのための滲出性中耳炎教室リターンズ

第3章 耳管の働き

耳管の働きを理解することは滲出性中耳炎の成り立ちを理解することにほかなりません。また、各種治療法を理解する上でも不可欠です。まずは、気圧の基本的なところから理解していきましょう。

気圧と気圧差

高い山では空気の圧力(大気圧)が低くなります。このことは上に乗っている空気の層の厚さが違うことをイメージすると理解しやすいでしょう。(図1) 空気を水に置き換えるともっと理解しやすいかもしれません。(図2) 例えば、天気予報で、高気圧とか低気圧とかいうのは、海水に置き換えると、波のうねりで、水面が高くなっているかどうかということと同じなのです。深くもぐると自分の上にある水の厚さが増すので、水圧が高くなるというわけです。そう考えると、台風はうず潮と一緒ですよね。(図3)

次は気圧の差の話です。例として、真四角のビニール袋を段ボールの箱の中に入れてみましょう。(図4) 袋の中と箱の中の気圧が等しい場合にはビニール袋の大きさ、形は全く変わりません。袋の中と箱の中の気圧に差がある場合にはどうでしょうか。袋の中よりも箱の中の方が気圧が高い場合、ビニール袋が外の気圧に押されてへこんでしまいます。逆の場合にはビニール袋は大きく膨らむこととなります。つまり、接するもの同士で気圧差がある場合、気圧の高い方から低い方を押す力が生ずるのです。これは気圧の低いほうが高いほうを引っ張る力という表現も出来ます。

耳管の働き

耳管の最も重要な機能は鼓室の換気、すなわち鼓室の気圧を一定に保つ働きです。鼓室は耳管を通して外界とつながっていますが、普段はペッタンコに閉じています。そして、あくびや飲み込み運動の際に開いて気圧を整える(つまり、外の空気を鼓室内に取り入れる)のです。(図5)

鼓室は耳管が閉じて、閉鎖腔のままだと、時間とともに鼓室の中の空気が減ってきて、陰圧になる傾向にあります。つまり、耳管がときどき開いて外界と鼓室との気圧差をなくさないと鼓室内の気圧が徐々に低下するのです。

以上のことは、普段、私たちの誰もが生活上経験していることです。具体的な例をお話しましょう。

高い山に登ると、耳がつまったような、音がこもるような不快な感じがします。これは高い山で外の気圧が低いにもかかわらず、鼓室内は平地の高い気圧のままに保たれるため、鼓膜の内外で気圧の差が生じ、鼓膜が外側に引っ張られるためにそのような不快な感じがするのです。

このような不快感が生じたとき、鼻をつまみ、喉から鼻の方に空気を送り込むようにしてきばる(いきむ)と、耳管を通して、鼓室に大気が送り込まれ、症状をなくすことができます。この方法はダイビングでは欠かせない動作で、耳抜きと呼ばれています。

耳管機能の年齢変化

耳管の開閉能、つまり鼓室を換気する働きは、生まれたときから十分に備わっているわけではありません。乳幼児期には耳管機能はまだまだ未熟で、十分余裕のある働きができません。ですから、急性中耳炎や鼻の炎症などをきっかけに、すぐに鼓室の換気が悪くなるのです。耳管機能は、その後、成長とともに徐々に発達し、10歳位でほぼ成人と同等の機能が備わるといわれています。

また、耳管の換気能力は、加齢により50、60歳代以降には徐々に低下します。

第2章 耳のしくみと働き 第4章 滲出性中耳炎とは

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