お母さんのための滲出性中耳炎教室リターンズ

第4章 滲出性中耳炎とは

滲出性中耳炎とは、耳管が正常に機能せず、鼓室(中耳)に液体がたまっている状態をいいます。しかし、急性中耳炎でも鼓室に膿汁がたまることがあり、これも液体に違いありません。それでは滲出性中耳炎と急性中耳炎、この2つはどのように区別されるのでしょうか。急性中耳炎では耳痛、発熱、鼓膜の発赤・腫脹を伴います。このような痛み、発熱、発赤・腫脹のことを急性炎症症状といい、2つの中耳炎はこの有無で区別されます。

つまり、滲出性中耳炎は、鼓室に液体が貯留し、急性炎症症状がないものと定義されています。裏を返すと、その両者の区別がつきにくいことも多いということです。例えば、昨夜、少し耳が痛かったといって来院した患児、鼓膜はほんの少し赤いだけで診察時にはもう痛みもない。でも、鼓室内には液体がたまっている。このような場合、急性中耳炎か、滲出性中耳炎か診断がつかない場合があります。もちろん、無理に診断をつける意味もありません。急性炎症が悪化した場合を見越した対処をすればすむことなのです。

それでは滲出性中耳炎で、なぜ鼓室に液体がたまるのでしょうか。わかりやすくするために、耳管が全く閉鎖してしまった状態、糸か何かで耳管を縛った状態をイメージして下さい。(図1)

鼓室にはどこからも空気が入ってくるところはありません。鼓室の空気は鼓室粘膜を介して周囲の血液中に常に吸収されています。耳管が閉じてしまうと外からの空気の供給が途絶えたままになるため、鼓室の空気が薄くなってきます。

すなわち、鼓室の気圧が低下します。すると鼓膜の外側(外耳道:大気圧)と内側(鼓室)で気圧差が生じ、鼓膜は外耳道側の、より気圧の高い方から押されるようになります。この時、外耳側から鼓膜を見ると、鼓膜は内側にへこんだ状態(内陥-ないかん-といいます)になります。(図2)

さらに鼓室の気圧低下が進むと、今度は鼓膜の内陥にとどまらず、周囲粘膜の水分が鼓室内ににじみでてきます。「にじみでる」を漢字で書くと「滲み出る」と書きます。すなわち、この状態が滲出性中耳炎なのです。

つまり、滲出性中耳炎は、耳管機能の悪化によって鼓室内が陰圧になりその状態が続くことによって鼓室内に滲出液がたまった状態といえます。一旦、鼓室内に滲出液がたまるとさらに困った状態を引き起こします。本来、鼓室は空気で満たされているべきところです。そこに常時液体が貯留すると、鼓室粘膜はその水分によってふやけた状態、つまり、粘膜が厚くなります。

さらに、耳管表面の線毛機能も弱まるため、鼓室からの排液ができにくくなり、そのことによって鼓室には一層液体がたまりやすくなるのです。一旦液が溜まったら、より一層その液が排出しにくくなるという悪循環を起こすのです。(図3)

鼓膜が内陥するということは、常に鼓膜が外から圧迫を受け、張りつめた状態になっているわけですから、音に対して弱い反応(振動)しかできず、聴力の低下を招きます。滲出液が鼓室にたまるとなおさら動きが制限され、さらに難聴が進みます。

第3章 耳管の働き 第5章 原因

お母さんのための滲出性中耳炎教室リターンズ

小児滲出性中耳炎アドバンスト

ここからはじまる小児滲出性中耳炎の新しい診療

このページのトップへ