お母さんのための滲出性中耳炎教室リターンズ

第5章 原因

滲出性中耳炎の本態が耳管機能不全であることは先に述べました。それでは耳管機能の悪化を引き起こす原因はなんでしょうか。(1)鼓室側の原因(2)鼻咽腔側の原因(3)耳管そのものの原因に分けて考えることにしましょう。

鼓室側の原因

鼓室に何か病気が起これば耳管の通りを悪くする大きな原因になります。その代表的な病気が急性中耳炎です。急性中耳炎は鼻咽腔から耳管を通って鼓室に細菌が感染し、炎症を起こす病気です。鼓膜や鼓室粘膜の発赤、腫脹をおこし、時には鼓室に膿汁がたまります。鼓室粘膜の腫れによって耳管の開口部が狭くなり、耳管の通気性が低下します。(図2)

急性中耳炎は1回おこしただけでも滲出性中耳炎に移行してしまうことがありますが、繰り返しおこす方がその確率が高くなります。急性中耳炎とその後におこる滲出性中耳炎の時間的関係をまとめると(図3)のようになります。

ケース1は急性中耳炎のみで、滲出性中耳炎を発症しないという経過ですが、正確な統計上のデータはないものの、おそらくこのようなパターンはむしろまれで、1、2割程度ではないかと思われます。

ケース2、3は急性中耳炎に引き続いて滲出性中耳炎を発症するパターンです。2のように比較的短期間で自然治癒するもの、3のように長期に及ぶ場合もあります。

ケース4や5では一旦軽快して鼓膜が正常化しても、再び滲出液がたまるというものです。このような場合も結構よく経験されるので、やはり経過観察が重要ということになります。 他に鼓室側の原因としては、鼓室粘膜そのもののアレルギー反応なども関与しているといわれています。

鼻咽腔側の原因

鼻咽腔は鼻腔と咽頭をつなぐ部位で、「びいんくう」と読み、上咽頭ともいわれます。(図4) 耳管はここに開口しており、滲出性中耳炎の発症には重要なところです。鼻咽腔は鼻腔と連続した空間なので、色々な鼻の病気が耳管機能低下の原因となります。もちろん、鼻咽腔そのものの病気でも耳管機能不全は起こります。

[鼻咽腔の病気]

代表的なものがアデノイドです。アデノイドは咽頭扁桃という鼻咽腔にある扁桃組織が腫大したものです。アデノイドは成長期の5〜6歳頃に最も大きくなり、その後は徐々に縮小するのですが、その程度には大きな個人差があります。アデノイドが大きくなると耳管が圧迫され、耳管の通りが悪くなります。(図5) アデノイドが大きいと鼻閉の原因ともなるため、蓄膿など副鼻腔炎(後述)を治りにくくし、そのことも耳管機能の悪化に間接的に影響します。

小児ではアデノイドが耳管機能不全に関係する代表的な病気ですが、大人では鼻咽腔に癌ができ、滲出性中耳炎の原因となることがあります。50〜60歳代の成人で滲出性中耳炎からこの部の癌が、ごく稀に発見されることもあります。

[鼻の病気]

アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎がその代表的なものです。どちらも鼻粘膜の腫脹をおこし、そのために耳管の開口部を通りにくくします。 アレルギー性鼻炎と副鼻腔炎は幼小児の滲出性中耳炎の要因というばかりでなく、急性中耳炎の原因にもなるので、これらの鼻の病気は滲出性中耳炎に直接にも間接的にもかかわっていることになります。

耳管そのものの原因

[年齢による機能低下]

第3章でもお話ししましたように、耳管機能は10歳くらいまでは未熟で、50〜60歳代以降は徐々に低下してきます。滲出性中耳炎はその2つの年齢層で多くみられます。鼓室や鼻咽腔に原因となるような病気がなくても、耳管そのものの機能不全が滲出性中耳炎の発症に大きく関わっています。

[先天性疾患]

一方、耳管を開放する筋肉の異常によっても耳管機能不全がおこります。ほとんどの場合は先天性の病気で、代表的疾患は口蓋裂です。口蓋裂では耳管を開放させる筋肉そのものが欠損していたり、筋肉の付着部位が正常な位置にないといわれており、そのため生まれつき耳管の機能が悪いままとなります。口蓋裂に合併する滲出性中耳炎は大変治療が困難なことが多く、慢性中耳炎に移行することも少なくありません。ほかにもダウン症候群でも滲出性中耳炎が発症しやすいことが知られています。

以上の原因をまとめますと以下のようになります。

鼓室側の原因 鼻咽腔側の原因 耳管そのものの原因
急性中耳炎
鼓室粘膜の過敏性など
アデノイド
鼻アレルギー
副鼻腔炎など
幼少のための未熟
加齢による機能低下
口蓋裂など
第4章 滲出性中耳炎とは 第6章 症状と鼓膜の状

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