お母さんのための滲出性中耳炎教室リターンズ

第6章 症状と鼓膜の状態

症状

1.難聴

鼓膜が外側から押される(内側から引っ張られる)と、鼓膜自体が張りつめた状態となり、外から入ってくる音に対する反応が鈍り、聴力が低下します。さらに鼓室に滲出液が溜まると、鼓膜だけでなく、耳小骨の動きも制限されるため、さらに強い難聴になります。つまり、滲出性中耳炎の1番の症状は難聴なのですが、残念ながら幼小児では自分からこのような症状を訴えることはほとんどありません。ご家族が日頃から難聴のサインを見逃すことのないように、注意深く見守ることが大切です。幼小児で難聴を思わせる行動を挙げてみます。

大人の場合は、高い山に登ったときのように「聞こえにくい」「耳がつまった感じ」「音がこもる感じ」「自分の声が耳に響く」などが主な症状です。

2.耳の不快感

乳幼児でも、やはり大人と同じような、もしかしたら大人以上の不快感があり、大きなストレスを強いているかもしれません。

いつも首をかしげている、よく耳を触る、などの動作は滲出性中耳炎が原因であることもあります。また、耳が変、耳が気持ち悪いというような症状も、難聴からきているのか、あるいは不快感そのものなのかもしれません。

3.平衡感覚の症状

この症状は、実は耳鼻科医の間でもあまり知られていないのですが、近年の欧米の論文では、盛んに報告されているものです。ぎこちなく、不器用、よく転ぶ、動作が不自然などの症状にも注意を払いましょう。

4.精神・心理的影響

これも滲出性中耳炎が原因でおこっている症状なのかどうか、判定は容易ではありません。しかし、チューブ留置術(後述)などの治療で、以下の症状が劇的に良くなることが経験的にわかり、滲出性中耳炎によっておこる可能性のある症状ということができます。

以上のような症状がある場合には注意が必要です。

5.言語・学習障害

言葉の遅れ、発音が不明瞭、間違って発音する、授業を普通に受けられない、これらも「症状4」と同様、滲出性中耳炎との関連性を判断するのは難しいものです。

もう1つ忘れてはならないことがあります。滲出性中耳炎は一般的に繰り返すことが多いということです。2〜3ヶ月の通院でようやく治ったと思っていたら、何の徴候もなく難聴がでてきたり、急性中耳炎や鼻症状の悪化をきっかけにまた滲出性中耳炎が再発するということが実に多いのです。

難聴が中等度以上で両側性にあれば、それほど神経質に注意しなくてもわかるものです。最も注意が必要なのは片方だけが滲出性中耳炎にかかっている場合です。この場合には一側が正常なため、患耳がどれほど悪くなっていても、周囲の人が難聴に気づくのは非常に難しくなります。やはり定期的に受診することが大切でしょう。

鼓膜所見

滲出性中耳炎の鼓膜所見として、多くの耳鼻科で使われることばに「鼓膜が倒れている」という表現があります。これはどういうことなのか、鼓膜がどのようになっているのか、大変、混乱を招く表現だと思います。理屈の上からもこの現象の表現には合わないので、やめていくべきでしょう。第2章でもお話ししましたように、鼓膜が内陥している、つまり「へこんでいる」という表現が最も適しているように思います。

(図1)は正常の鼓膜と内陥した鼓膜を比べたものです。鼓膜の内陥によりツチ骨の鼓膜に引っ付いている部分も同時に鼓室側に偏位し、正面から見てもその部分の角度が変化していることが判ります。

滲出性中耳炎にも種々の程度があり、軽いものではこの内陥が見られるだけです。さらに程度が強くなると、鼓室に滲出液が貯留してきます。(図2) 貯留液の量も様々で、鼓膜を通して喫水線が確認できる場合は鼓室に貯留液がある確実な証拠になります。鼓室に貯留液が充満している場合にはこのような喫水線(矢印)はできません。

つまり、鼓室内の滲出液の有無は鼓室に液が充満している場合の方が診断が難しいことがあるのですが、おおよそは鼓膜の色調の変化で予測できます。さらに滲出液の貯留が続くと、内陥していた鼓膜が滲出液によって逆に押され、膨隆してくることもあります。鼓室の陰圧が続くと、滲出液の有無に関わらず、徐々に鼓膜自体にも変化が出てきます。鼓膜が薄くなり、弾力が失われてくるのです。

このような場合にはなるべく早く、鼓室の陰圧状態を解除する必要があります。例えば、鼓膜切開で鼓室圧を調節すると、比較的短期間のうちに、鼓膜の厚さと弾力は正常化します。しかし、あまり長いことこのような状態が続きますと、鼓膜が変性したままとなり、慢性中耳炎に移行してしまう場合もあります。

第5章 原因
第7章 聴力検査など

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